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    交通事故

    過失相殺/素因減額

    最終更新2017-04-30 14:27:19



    素因減額

     過失相殺については,不法行為(交通事故)の原因になった行動に落ち度(過失)がある場合,その結果生じた損害額を減額(相殺)することで被害者と加害者の公平を図る趣旨でした。

     では,損害額を減額されるのは,交通事故被害者に過失がある場合だけなのでしょうか。

     交通事故実務では,他にも大きく損害額を減額される場合があります。

     それが,素因減額と呼ばれる減額です。



     最高裁判所第一小法廷は,昭和63年4月21日,裁判官全員一致の意見で次のとおり判決しました。

    身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによつて通常発生する程度、範囲を超えるものであつて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。

     すなわち,「損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし…その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる」と判断したのです。

     つまり,交通事故後に,性格的,心理的な影響で交通事故から発生する損害を,通常よりも大きくしてしまった場合,全体の損害額から大きく減額される可能性があることになります。

     損害の拡大自体は,交通事故後の行動に基づく場合がほとんどでしょう。

     しかし,そのような事故後の損害拡大の行動を含めて,事故前から存在する性格に起因するとの考えから,「素因」減額と呼ばれるようです。

     もっとも,性格に起因することから心理的素因に基づく減額を行う,という論理構成をとらず,単純に被害者が拡大した損害は,交通事故と(相当)因果関係がないと言って,そもそも,拡大部分は賠償の対象とならないと考える場合もあります。

     素因減額には心因的な素因の他に身体的素因(既往症や通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴など)が斟酌の対象となる場合もあります。

    最高裁判所は心因的素因に基づく損害拡大について,素因減額を肯定したことを述べました。

     そして、最高裁判所は身体的素因に基づく素因減額についても認めています。

     

     平成4年6月25日最高裁判所第一小法廷は次の通り判示しました。

     被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである。

     また、平成8年10月29日第三小法廷も上記判例を引用しながら,交通事故の案件について,下記のとおり一般論を述べ、事故前に身体的素因が発症していなかった場合についても素因として扱う場合があり得ることを述べています。

     被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となつて損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の規定を類推適用して、被害者の疾患を斟酌することができることは、当裁判所の判例(最高裁昭和六三年(オ)第一〇九四号平成四年六月二五日第一小法廷判決・民集四六巻四号四〇〇頁)とするところである。そしてこのことは、加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか、疾患が難病であるかどうか、疾患に罹患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか、加害行為により被害者が被つた衝撃の強弱、損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の事情によつて左右されるものではないというべきである。

     以上の判例から交通事故で気を付けなければならないのは,例えば,交通事故で受傷したむち打ち損傷などの身体的疾患が顕在ないしは潜在していた既往症と相俟って症状を悪化させていないか,という点です。

     特に問題となるのが,既往症が顕在していない場合ではなく,既往症が潜在的な状況(症状を発症していない場合)でしょう。

     たとえば,脊椎は経年性変性と言って,年をとるとともに自然に何らかの変性をもっていることも多く,そのような変性と交通事故の受傷があいまって,症状を悪化させる場合があります。

     また,膝の軟骨がすり減っている場合(変形性膝関節症など)や,経年性変性ですでにヘルニアを発症してしまってる場合もあります。

     まずは,交通事故受傷後に通っている整形外科などに相談し,交通事故の受傷と経年性の変性は切り分けられるのか,聞いてみるとよいでしょう。

     そして,経年性の変性の影響もある場合は,現在の治療費から,慰謝料,休業損害,後遺症発症に関する損害賠償に至るまで何割かの割合で減額される可能性がありますので,,法律専門家へ早めに相談していただき,後々の展開を踏まえたアドバイスを受けていただいた方が良いケースもあります。





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