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刑事訴訟法:論点:捜査4.捜索/差押

捜索/差押

①捜索/差押の要件:捜索差押は、「必要があるとき」に、「令状により」行われる(刑訴法218条1項)。この、必要性について、裁判官が審査できるか争いがあるが、肯定説が判例、通説である。具体的な審査は、ⅰ事案の重大性、ⅱ証拠の重要性、ⅲ代替手段の有無などによる捜索差押の必要性と、差押を受ける者の不利益を比較検討して、行う。
注1)判例(東京地決平成10年2月27日)には、個人情報を含んだ電磁的記録媒体について、情報のプライバシー保護の要請から、一部を除いて捜索の必要性を否定したものがある。侵害利益を重視して、厳格な審査を行った例といえる。

②令状の記載要件:令状には一定の「事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない」(219条1項)。
②-①差押対象物の記載:令状には差し押さえるべき物の記載が必要である。この趣旨は、差押対象物を限定し、捜査機関の差押範囲を限定するとともに、処分を受ける者の不服申立権(430条1項、2項)を保障する点にある。しかし、流動的、発展的な捜査の過程において、差押目的物が判明していることは稀であって、ある程度包括的な記載は避けられない。したがって、具体的な例示がされている限り、その他本件に関係あると思料される一切の物といった包括的記載も219条1項に反しないというべきである。
②-②罰上の記載:219条1項は罪名の記載を要求している。しかし、罪名の記載は憲法35条1項の要求するところではなく、刑訴法219条によって要求されているにすぎず、219条1項の要請としても、適用法条の記載までは要求されない。特別法規に関しては、たとえば、地方公務員法違反との罪名記載も適法である。
②-③捜索すべき場所の記載:捜索すべき場所の記載においては、当該場所を基準として司法審査がされる側面があり、審査に服しても新たな法益侵害を生じない同一管理権の及ぶ範囲を確定しうる程度の記載が必要である。

③令状の効力:捜査官は「令状により差押、捜索又は検証をすることができる」(218条1項前段)。
③-①同居人の携帯物:219条1項は、プライバシー侵害の質的差異に応じて、捜索対象を「場所」「身体」「物」に分けて規定している。では、場所に対する捜索令状で、同居人携帯物に対して捜索を行えるだろうか。この点、同居人がたまたま携帯しているに過ぎない携帯物は、当該場所に存在している捜索対象物と同視できるから、捜索、差押の対象となる(最決平成6年9月8日参照)。
③-②居合わせた者の身体、携帯物:これに対して、偶然その場に居合わせたに過ぎない者の携帯物および身体は、場所に置かれた物と同視できず、原則として、場所を明示した捜索令状によっては、捜索できない。しかし、明示された証拠物を隠し持っている蓋然性が高く、即座に捜索差押をすべき必要性が認められる場合は、捜索に伴う「必要な処分」(111条1項)として、居合わせた者の身体、携帯物を捜索しうる。
③-③電磁的記録物:電磁的記録物においては、中身を確認しなければ、差押令状に示された差押対象物か否かを確定できない。したがって、原則として中身を表示させ、プリントアウトし(「必要な処分」(111条1項)として許容される)てから、検証により内容を確認するか、または、差押をすべきである。しかし、ⅰ.被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性認められ、ⅱ.内容を確認していたのでは情報を損壊される危険があるときは、中身を確認することなく包括的に差押えることもゆるされる(最判平成10年5月1日)。
③-④別件捜索、差押:軽徴な別件に基づく捜索・差押令状に基づいて、殊更に本件の捜査に供する目的で、捜索差押を行うことは、本件についての令状審査潜脱といえる。したがって、捜査機関が専ら別罪の証拠に利用する目的で、令状に明示された物を差押える事は、禁止される(最判昭和51年11月18日)。
注1)この場合、証拠および、別件と本件の関係や、別件の軽重、本件と別件の関連性を総合的に考察して、専ら本件の証拠として利用する目的か否かを検討することになると思われる。
③-⑤令状に記載のない物:令状に記載されていない物は、差押できない。したがって、1.令状を請求するか、2.領置するか、3.現行犯逮捕に伴い差押るほか無い。

④令状によらない捜索・差押:捜査官はⅰ.「被疑者を…逮捕する場合において」ⅱ.「必要があるとき」、ⅲ.「逮捕の現場で」、差押、捜索又は検証をすることができる(220条1項柱書、2号)。「令状は、これを必要としない」(220条3項)。
④-①無令状捜索・差押の趣旨:無令状で捜索・差押が許容される趣旨は、以下の点にある。すなわち、逮捕によって現場のプライバシー、住居の平穏はすでに制約され、また、逮捕の現場においては証拠品が存在する蓋然性が認められる。また、被疑者が凶器を所有する場合、これを差押えて円滑に逮捕する必要がある。
注1)被疑者の逮捕を円滑に行えることのみを企図して捜索、差押権限を認めたとする見解もある(緊急処分説)。しかし、220条1項2号が検証をも許容している点を説明できない。
④-②「逮捕する場合」:では、未だ逮捕に着手しない段階においても、「逮捕する場合」に該当するといえるだろうか。たとえば、未だ被疑者を逮捕しないのに、被疑者の住居を捜索し、証拠物を差押えることが許容されるか問題となる。しかし、逮捕する場合は、1号にもかかる要件であるところ、1号は逮捕前を予定している。よって、「逮捕する場合」とは時点ではなく、幅のある逮捕の際をさす文言と解される。したがって、ⅰ.不在者が帰宅するとともに逮捕を行う態勢のもと、差押をおこない、ⅱ.これと接着して逮捕した場合は、「逮捕する場合」の要件を満たす(最大判昭和36年6月7日)。
注1)なお、6名が捜索・差押を違法とする反対意見を付しており、確固たる見解とは言い難い。
④-③「逮捕の現場」性:220条2号は、捜索差押を行える範囲を「逮捕の現場」に限定する。「逮捕の現場」とは、いかなる範囲か。この点、220条1項2号の趣旨は、逮捕の現場にはすでにプライバシー、住居の平穏に対する侵害が及び、かつ、証拠物が存在する蓋然性が認められる点にある。したがって、「逮捕の現場」は、この趣旨が妥当する合理的範囲に限られる(東京高判昭和44年6月20日)。
注1)被疑者の身体に対する捜索は、その場で行うことが、被疑者の名誉を害し、混乱を発生させ、または交通の妨げとなる場合、最寄の適当な場所へ移動してから、捜索、差押を行える。その場合捜索差押は、「逮捕の現場」で行われたと同視できるとされる(最決平成8年1月29日)。
注2)被疑者以外の者の居宅内に、当該第三者の許諾を得て入った捜査官が、居宅内で被疑者を逮捕したとしても、その場所に及んだ住居の平穏に対する侵害は任意のものである。したがって、無令状捜索差押の趣旨が当たらず、「逮捕の現場」に該当しない可能性がある(福岡高判平成5年3月8日)。
④-④物的範囲:無令状捜索差押も、逮捕の効力として行える。そして、逮捕の効力は人ではなく、事件に及ぶと解される(事件単位の原則)。なぜなら、令状審査は、一つの社会的事実を対象としてなされるからである。したがって、無令状捜索差押も、逮捕被疑事実と同一の事件においてのみ、行える。もっとも、ある事実とある事実が実体法上一罪の関係にあっても、個々の事実が別個の社会的事実と評価できる場合には、もはや判断資料を共通にするとは言えず、逮捕の効力は及ばない。
注1)したがって、2つの覚せい剤所持について、政策的に一罪とされる場合でも、ここの事実が内容を異にすれば、訴訟法上は別個の事実として扱うべきで、事件の同一性を肯定できず、無令状捜索差押は違法と評価され得る(福岡高判平成5年3月8日)。

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