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刑法各論:論点:財産犯:窃盗罪

①-①横領罪との区別:奪取財たる窃盗罪と、横領罪との区別は占有侵奪の有無にある。すなわち、「窃取」とは、他人の意思に反して占有を自己に移す行為である。共同管理する物を、無断で自己の管理下に移せば、自己の占有と同時に、他人の占有も存在しているから、横領罪ではなく窃盗罪が成立する。自己が占有しているかではなく、他人の占有があるかが、メルクマールである。「占有」の意味については、争いがある。

①-②横領罪との区別(封印物):封印物について委託があった場合、封印された中身については委託者に占有が残るとして、窃盗罪が成立する(最判昭32年4月25日)。そして、委託物全体については、委託者の占有は認められないから、横領罪が成立する(最判昭和29年6月22日)。
注1)委託物全体について占有が残るとして、窃盗罪の成立のみを認める見解や、委託物の中身についても占有は認められないとして横領罪のみを認める見解もある。

②-①死者の占有:死者には占有が認められず、死者から占有を奪っても、占有離脱物横領罪の成否が問題となるのみである。しかし、ⅰ占有者を殺害し占有を離脱させた自己の行為を利用し、ⅱ殺害後ただちに(殺害と同時と評価しうる時間的、場所的範囲内で、)財物を自己の支配下に置いた場合には、死者の生前の占有はなお刑法上の保護に値し、窃盗罪が成立する(最判昭和41年4月8日)。
注1)第3者が自己の支配下に移す行為については、自ら占有を消滅させたといえないから、占有離脱物横領罪にとどまると考えられる。

②-②死者が死亡したとの誤信:被害者が気絶しているに過ぎないのに、死亡しているものと誤信して財物を奪った場合、被害者の占有を認識していないから、窃盗罪の「罪を犯す意思がない」(刑法38条1項)ものとして、軽い占有離脱物横領罪の限度で処罰される(38条2項)のだろうか。この点、行為者が、ⅰ自ら占有を離脱させた自己の行為を利用して、ⅱ殺害後直ちに財物を自分の支配下に移す行為は、刑法上なお、当罰的である。そして、行為者も死者の生前の占有を認識しながら、財物を自己の支配下に移している以上規範に直面している。したがって、「罪を犯す意思」にかけるところはなく、窃盗罪に問責できる。

③下位者の占有:車掌が貨物列車の荷物を領得した場合、倉庫の係員が倉庫の荷物を領得した場合、現実に荷物を直接管理していたのは、下位者たる、車掌や倉庫係員である。しかし、直接管理するものが下位者として上位者の指示命令に従っている場合には、下位者の事実上の支配は観念できず、上位者の事実上の支配が侵害されたものとして、窃盗罪が成立する(刑法に間接占有の観念は妥当せず、上位者の直接支配が侵害されたことになる。すなわち、会社は現実の管理にかかわらず、直接の支配を否定されたことになる。)。

④窃盗罪と詐欺罪の区別:窃盗罪と詐欺罪は、意思に反した占有侵奪か、瑕疵ある意思に基づく占有移転かによって、区別される。したがって、車の試乗をすると偽ってそのまま乗り逃げした場合、ディーラーが占有を移転する意思を有していたとして交付行為を認定すれば詐欺罪になる。しかし、交付行為を認定できなければ、意思に反した占有の侵奪として、窃盗罪が成立する。

⑤自己物の引き上げ:自己物であっても、他人の占有を奪う行為は窃盗の構成要件に当たる(242条、235条)と解され、あとは、権利行使、自救行為として違法性阻却の問題となる。

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