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刑法各論:論点:賄賂の罪

賄賂の罪

①賄賂罪の保護法益:賄賂罪の保護法益をいかに解すべきだろうか。この点、職務の公正そのものを保護法益とする見解もある(純粋説)。しかし、賄賂罪において、職務の不正は加重類型とされる(197条の3参照)。したがって、賄賂罪は第1次的には、職務の公正ではなく、職務の公正に対する国民の信頼を保護法益にしているものと解される。
注1)職務の不可買収性と解する見解もある。

②職務権限:賄賂罪は公務員(構成身分)が、「その職務に関し」賄賂を受け取ることで成立する。「職務」とは、公務員の取り扱うべき一切の執務をさす(最判昭和28年10月27日)。では「その職務」とは、職務と公務員にどの程度の関連性を要求する概念だろうか。この点、賄賂罪の保護法益は公務員の職務の公正に対する国民の信頼と解される。そして、公務員が法令上一般に職務権限とされている行為について、賄賂を受ければ、国民の信頼は害される。したがって、「その職務」とは、収賄公務員の一般的職務権限に属すれば足りる(大判昭和6年8月6日)。
注1)一般的職務権限に属するか否かは、通常課を単位に決定されるなど、国民が当該公務員がどの範囲で職を行えると考えるか、に影響を受けると思われる。
注2)一般的職務権限に属せば、国民の公務一般に対する信頼が害されるのは、一般的職務権限に属する以上、公務に影響を与えると、国民が認識しているからである。

③職務密接関連行為:さらに、法的権限に含まれない行為であっても、慣例上公務員が事実上取り扱う職務であれば、公務に影響を及ぼし、国民の公務に対する信頼を害する。したがって、ⅰ.公務性の大小、裁量の広狭、ⅱ.事実上の影響力の強弱、ⅲ.影響力行使の態様、ⅳ.影響力行使がしばしば行われるものか、により判別される、事実上公務に影響を与える慣例上の権限も、「その職務」に該当すると考える。

④時間的限界:「その職務」とは、現に行える職務であることまでを要求する概念ではない。ⅰ.市長選再選前に、市長の再選後の職務に関し賄賂を受けた場合も、受託収賄罪が成立するとしている(最決昭和61年6月27日)。また、公務員であった者が、在職中の不正行為について、賄賂を収受すれば、事後収賄罪に問われる(197条の3第3項)。このこととの均衡から、ⅱ.転職前の職務に関して、転職後賄賂を受けた公務員については、収賄罪が成立する(最判昭和28年4月25日、最判昭和58年3月25日)。時間的に間隔があっても、国民の公務に対する信頼は失われる以上、「その職務」とは、時間的隔たりをそれほど厳格に考慮しない概念と考えられる。
注1)ⅰは、賄賂より後に職務権限を得る場合で、ⅱは、賄賂より前に職務権限を有していた場合である。
注2)転職後の収賄については、否定説もある。また、事後収賄説もある。しかし、転職後も公務員であり、「公務員であった者」(197条の3第3項)との構成身分に文言上該当しない。

⑤賄賂:「賄賂」とは、職務の報酬としての利益である。賄賂は、「その職務に関し」提供されなければならない(職務と賄賂の対価性)。「賄賂」は、社会的儀礼の範囲を超えた一定程度の利益であれば足り、①債務の代弁済、②芸子の演芸、③異性間の情交、④無利子による金銭、財物の貸与、⑤値上がり確実な株式の(現時点での相当額での)譲渡も、「賄賂」に当たりうる。
注1)社会儀礼の範囲を超えた利益か否かは、双方の地位、互いの関係などにより、判断される。

⑥請託:請託とは、職務に関し一定の行為を行うこと、ないし、行わないことを依頼することをいう。依頼した行為は不正行為であることを必要としない。賄賂罪の第1次的保護法益は公務に対する国民の信頼と考えられ、正当な行為であっても、職務に関し賄賂を受けることは、国民の信頼を害するからである。請託をうける、とは、依頼を承諾することを言う。

⑦不正な行為:加重収賄罪などにいう、不正な行為とは、入札担当公務員が入札価格を教えたり、不当に減額した確定申告書を受理するなどの行為をいう。相当な行為をしないとは、送検相当の被疑者を送検しなかったり、差し押さえるべき証拠物を差し押さえなかった行為をいう。

⑧恐喝、詐欺と贈賄:公務員が贈賄側を恐喝して、または、詐欺して、賄賂を交付させた場合、公務員は、収賄および恐喝ないし詐欺罪の観念的共同として処断される。では、贈賄を行ったものは、贈賄罪に問責されるだろうか。この点、恐喝ないし詐欺により金銭を交付したとしても、意思に反して賄賂を送ったとはいえず、瑕疵ある自己の意志に基づいて、贈賄を行っている以上、「賄賂を供与し」(198条)に該当するというべきである。したがって、贈賄罪に問責される。恐喝され、ないし欺罔された事実は、情状として量刑に斟酌されるに過ぎないものと考える。

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