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刑法総論:論点:違法性:正当防衛

正当防衛

①正当防衛の根拠:違法性の実質は、社会的正当性を欠いた法益侵害結果に求められる。そして、構成要件該当性が認められる以上、法益の侵害は生じており、違法性阻却事由は、行為の正当性を基礎付けることで違法性阻却を導くものと解される。したがって、正当防衛としてした行為の違法性が阻却されるのは、法が許した法益侵害(法の自己保全)行為として、行為の正当性が基礎付けられるからと解する。

②急迫性:法が自己保全のための法益侵害を許容するのは、国家による法益の保全が間に合わない緊急時である。したがって、正当防衛には「急迫」性の要件が課される。そして、行為前に被害者が侵害を予期していたとしても、法益回避義務が生じるわけではなく、実際に侵害が生じたとき、「急迫」性の要件が満たされる。もっとも、行為者が侵害を予期し、かつ、侵害に乗じた積極的加害意思をも有するにいたれば、もはや、法の自己保全行為との評価はできず、行為の正当性を欠く。したがって、「急迫」性の要件を欠くというべきである(最決昭和52年7月21日)。
注1)「急迫」とは、侵害が現に生じているか、間近に差し迫っていることをいう。したがって、自分を狙ってうろうろしている男を見つけたとき、背後から襲うことも、必要かつ相当な行為といえる限り、正当防衛の要件を満たしうる。

③不正性:侵害は「不正」である必要がある。正当防衛は、他社の違法な法益侵害行為に対して、法の自己保全として、対抗行為を許容するものであるから、「不正」とは、違法を意味すると考える。
注1)したがって、他者の所有する動物が襲い掛かってきた場合、「不正」とはいえず、正当防衛は成立しない。「不正」を違法と解する必要はないとして、対物防衛を認める見解もある。しかし、「不正」と違法を別異に解する論拠は薄弱に思われる。

④侵害:「侵害」は、法益侵害ないし、その危険を惹起する行為を指す。もっとも、侵害が現に行われる必要はなく、間近に法益侵害ないし、その危険を惹起する行為が迫っていれば、足る。

⑤法益:「権利」は、法益をさす。正当防衛は、法が保護する法益の保全を国家が行えない緊急時において、私人に法の自己保全として許された行為だからである。
注1)したがって、国家的法益も法が保護する利益である以上、「権利」に該当する。
注2)第三者の権利が侵害されている場合にも、36条1項は「他人の権利」としているから、正当防衛は成立する。第三者に対する侵害も、急迫不正の侵害に違いはなく、緊急の法益保全として、行為の正当性が肯定される。

⑥-①防衛の意思1:要否:正当防衛の正当化根拠は、(違法性が推定される)当該法益侵害行為に、法益を保全する行為としての社会的相当性が認められる点にある。そして、社会通念上、行為者の主観は行為の評価に影響を与える。また、36条1項も「ために」として、意思の要素を要求している。したがって、正当防衛には、防衛の意思が必要と考える。
注1)したがって、防衛の意思を欠く‘偶然防衛”の事例では、正当防衛の成立が否定される。

⑥-②防衛の意思2:内容:もっとも、防衛の意思が必要としても、防衛の意図、動機まで要求すべきでない。正当防衛は急迫した侵害に対して、反射的、本能的に行われる場合もあり、意図、動機まで要求するのは酷である。したがって、防衛の意思とは、急迫不正の侵害を認識し、これを排除するために加害者に立ち向かう意識で足ると解すべきである。
注1)したがって、憤激や逆上などの感情と、防衛の意思は並存しうる。
注2)また、単純な攻撃意思と、防衛の意思は両立、並存しうる。もっとも、侵害行為に乗じて積極的に加害行為に出た場合で、もっぱら攻撃の意思しか認められない場合は、防衛の意思を欠き、もはや社会通念上正当な行為と、いえない。
注3)相手方の侵害が現実化する以前に、侵害を予期し、積極的に加害する意図を有するにいたった場合は、「急迫」性の要件を欠く。侵害が現実化した以後に、積極的な加害行為にでて、もっぱら攻撃の意図しか有さない場合は、防衛の意思を欠く。もっとも、急迫性は客観的に判定すべきとの批判もある。
注4)過失による防衛行為については、防衛の意思が認められる事例と、認められない事例がある。たとえば、他者が人間に襲われているところを、熊に襲われてると思い銃を撃ったところ、人を射殺した場合、人を殺す故意に欠け、過失致死となる。このとき、急迫不正の侵害を認識、これを排除するため加害者に立ち向かう意思は認められ得る。もっとも、熊の侵襲が不正といい得るか、また、防衛の意思において、厳密に不正といい得る必要があるかは、別論である。

⑦防衛の客体:防衛行為は、急迫「不正の」侵害に「対して」行われなければならない。したがって、防衛行為が第三者に向けられた場合、正当防衛は成立せず、緊急避難の成否が問題となる。
注1)行為者が、侵害者に対して反撃する意図で、誤って第三者に加害してしまった場合、いかに解すべきだろうか。客観的に正当防衛の要件を満たさないが、たまたま第三者に攻撃が及んでしまった場合に要件の厳しい緊急避難とするのは、行為者に酷である。そして、行為者の主観はあくまで侵害者対する防衛行為を行う意図であり、規範の問題に直面していない。したがって、誤想防衛に準じて故意が阻却されると解する(すなわち、責任故意の段階では、構成要件故意の段階で客体がおよそ人であった点にしか意味を持ち得なかった認識した行為客体が、侵害者という行為評価上意味を有する客体に昇華し、故意を阻却しうる。)。
注2)侵害者が第三者を道具として利用した場合、第三者は、侵害者の犯罪遂行手段として、不正の侵害の一部としての性質を帯びる。したがって、この場合、例外的に、第三者に対する反撃行為は、不正の侵害に対する行為と言い得、正当防衛行為たりうる。

⑧相当性:防衛行為は「やむを得ずにした行為」でなければならない。補充制を要求される緊急避難と異なり、不正な行為に対する正当防衛においては、やむを得ずとは、防衛行為が侵害を排除するのに、相当なものであれば足りる。相当性の判断は、1.被侵害法益の種類、2.侵害の態様、3.侵害者の危険性、4.現実に選択可能だった手段、などを総合的に考慮して、行為の正当性を肯定しうるか否かにより決する。

⑨自招侵害:自ら侵害を招いた場合、正当防衛は成立するだろうか。まず、自己の行為による侵害を予期し、これに乗じて積極的に加害に及ぶ意図であれば、「急迫」性の要件を欠く。次に、自己の予期した侵害より過大な侵害が生じた場合、または、過失により相手方の侵害を招来してしまった場合、「急迫」性は肯定される。しかし、自ら侵害を招き、これを避けるために反撃行為に出ることは法の自己保全を趣旨とする正当防衛の本質に反する。したがって、侵害を招いた行為の性質、態様及び、現に生じた侵害行為の性質、態様、被侵害法益の重大性などを勘案して、正当防衛権の濫用として正当防衛成立が否定される場合があるものと考える。

⑩喧嘩:喧嘩は不正な侵害行為の応酬であり、一こま一こまを切り取れば、正当防衛の要件を満たしそうである。しかし、喧嘩は一連の攻防であり全体的に事態を考察して、正当防衛の成立を検討することが適切である。そして、全体として自体を考察したとき、一方がナイフを持ち出すなど過剰な加害行為に及んだ場合や、一方がもっぱら守勢に回った場合に、当該侵害行為に対する防衛行為として、正当防衛の成立を肯定できる場合がある。
注1)もっとも、喧嘩において通常は、お互いに専ら攻撃の意図しか有さず、急迫性ないし、防衛の意思を欠き、正当防衛の成立は認められないものと解される。したがって、特殊事情がある場合に限り、正当防衛成立の予知があるに過ぎない。

⑪-①第三者所有物1:侵害者側の使用:侵害者が第三者の所有物を利用して侵害を行った場合、第三者所有物は、侵害者の「不正」の侵害の一部といえる。したがって、第三者所有物に対する加害も、正当防衛を成立させる。

⑪-②第三者所有物2:防衛者側の使用:防衛者が反撃行為に第三者所有物を利用した場合、第三者所有物は侵害行為の一部を構成しない。したがって、第三者所有物の損壊については、緊急避難が成立する余地があるに過ぎないことになる。

 

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