民法404条は、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする、と定めます。この利息は、当事者の合意に基づいて発生します。利息の発生は合意したが、その利率が特に合意されていない場合は、本条により、その利率は年5%とされます。
遅延損害金は、これとは別に発生する、履行遅滞に基づく損害賠償請求権が法的根拠となっています。ただし、約定利率が法定利率を超える時を除いては、民法404条の例により損害金の利率が年五分の割合で算定されます(民法419条1項本文)。
利息、遅延損害金等附帯請求
利息や遅延損害金を訴訟で請求する際、附帯請求として請求の趣旨に記載することが一般的です。
民事訴訟法9条2項は、「果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない」旨を定めます。同条の趣旨について「平成27年 5月19日最高裁第三小法廷決定(平26(許)36号手数料還付申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件)は、以下のとおり述べています。
訴訟の目的の価額は管轄の決定や訴えの提起等の手数料に係る算定の基準とされているところ,民訴法9条2項は,果実,損害賠償,違約金又は費用(以下,併せて「果実等」という。)の請求が訴訟の附帯の目的であるときは,その価額を訴訟の目的の価額に算入しない旨を定めている。同項の規定が,金銭債権の元本に対する遅延損害金などのように訴えの提起の際に訴訟の目的の価額を算定することが困難な場合のみならず,それ以外の場合を含めて果実等の請求をその適用の対象として掲げ,これらの請求が訴訟の附帯の目的であるときはその価額を訴訟の目的の価額に算入しないものとしているのは,このような訴訟の附帯の目的である果実等の請求については,その当否の審理判断がその請求権の発生の基礎となる主たる請求の当否の審理判断を前提に同一の手続においてこれに付随して行われることなどに鑑み,その価額を別個に訴訟の目的の価額に算入することなく,主たる請求の価額のみを管轄の決定や訴えの提起等の手数料に係る算定の基準とすれば足りるとし,これらの基準を簡明なものとする趣旨によるものと解される。 |
上記最高裁判例の事案のように、請求が付帯請求か否か争われる場合もあります。
但し、附帯請求として請求されたとしても、訴訟物としては独立した一個の訴訟物となりますので、請求原因の遺漏などは当然ですが、許されないことになります。
附帯請求と訴えの変更
附帯請求は、民事訴訟法9条2項により訴額の算定の基礎とされません。しかしながら、附帯請求も独立した訴訟物であることから、訴えを変更する場合、請求、乃至は請求の原因の変更として、訴えの変更に関する規律に服すものと考えられます(民事訴訟法143条参照)。
遅延利息の起算日と一部認容
原告の請求の趣旨よりも遅い起算日について認定し、一部認容した裁判例として下記の裁判例などがあります。附帯請求についても、起算日を遅らせたり、算定の基礎となる請求の認容が一部に留まる場合等、一部認容は当然に予定されているものと考えられます。
平成27年 2月26日東京地裁判決(平25(ワ)13606号 預貯金払戻請求事件)
被告の履行遅滞の成否(争点2)について …中略… 以上によれば,原告の請求は,別紙「供託未了の各預金債権額等」記載1ないし5の各「供託未了金額」の「元金」欄記載の各金額及びこれに対する各「遅延損害金」欄記載の起算日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金並びに上記別紙記載6の「供託未了金額」欄記載の金額5万5403円(請求拡張後の元金に係る請求額165,682円-供託済みの元金額110,279円=55,403円)及びこれに対する平成27年1月16日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金(被告は別紙預金目録記載6の普通預金債権につき,提訴時の請求額(遅延損害金を含む。)を上回る額を供託したから,法定充当により供託後の残元金に対する遅延損害金の起算日は平成27年1月16日となると解する。)の支払を求める限度で理由がある。 |
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