証拠調に関する決定と不服申立

証拠調に関する異議申立

刑事訴訟法第三百九条  検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。
2  検察官、被告人又は弁護人は、前項に規定する場合の外、裁判長の処分に対して異議を申し立てることができる。
3  裁判所は、前二項の申立について決定をしなければならない。
(異議申立の事由)
刑事訴訟規則第二百五条 法第三百九条第一項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。但し、証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない。
2 法第三百九条第二項の異議の申立は、法令の違反があることを理由とする場合に限りこれをすることができる。

(異議申立の方式、時期)
同第二百五条の二 異議の申立は、個々の行為、処分又は決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちにしなければならない。

(異議申立に対する決定の時期)
同第二百五条の三 異議の申立については、遅滞なく決定をしなければならない。

(異議申立が不適法な場合の決定)
同第二百五条の四 時機に遅れてされた異議の申立、訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな異議の申立、その他不適法な異議の申立は、決定で却下しなければならない。但し、時機に遅れてされた異議の申立については、その申し立てた事項が重要であつてこれに対する判断を示すことが相当であると認めるときは、時機に遅れたことを理由としてこれを却下してはならない。

(異議申立が理由のない場合の決定)
同第二百五条の五 異議の申立を理由がないと認めるときは、決定で棄却しなければならない。

(異議申立が理由のある場合の決定)
同第二百五条の六 異議の申立を理由があると認めるときは、異議を申し立てられた行為の中止、撤回、取消又は変更を命ずる等その申立に対応する決定をしなければならない。
2 取り調べた証拠が証拠とすることができないものであることを理由とする異議の申立を理由があると認めるときは、その証拠の全部又は一部を排除する決定をしなければならない。

(重ねて異議を申し立てることの禁止)
同第二百六条 異議の申立について決定があつたときは、その決定で判断された事項については、重ねて異議を申し立てることはできない。

証拠採用決定に対する特別抗告について

昭和29年10月 8日最高裁第三小法廷決定(昭29(し)37号証拠採用決定に対する特別抗告事件)

記録によると、被告人森原春一外四名にかかる所得税法違反被告事件の第一審たる福岡地方裁判所の第一五回公判期日において、検察官から刑訴三二一条一項二号の書面として、証人志岐文雄の所論検察官供述調書について証拠調の請求がなされたところ、弁護人から右供述調書は強制誘導によるものであり、かつ信用すべき特別の情況の下に作成されたものではない等の理由により異議の申立がなされたのであるが、同裁判所は右異議に拘らず、証拠能力ありとしてこれを証拠に採用する旨の決定をなし、証拠調を了したので、弁護人から右証拠採用決定に対して本件特別抗告の申立がなされたものであることがわかる。
ところで、刑訴四二〇条一項によれば、右証拠採用決定のような「訴訟手続に関し判決前にした決定」に対しては、直接に抗告することを許されていないのであるが(重ねて異議を申立てることもできない。刑訴規則二〇六条)、この種の決定に対して抗告することを許さないとする所以のものは、かかる決定に対しては一々独立に不服を申立てることを許さなくとも、その決定の不当不法が本案判決に影響を及ぼす限り、その終局判決に対する上訴において(上告においては、原則として憲法違反および判例違反を理由とする場合に限ること勿論である)、その救済を求めることができるからに外ならない(昭和二六年(し)第七一号同二八年一二月二二日大法廷決定「集七巻一三号二五九五頁」、昭和二六年(し)第一〇三号同二七年一二月二七日第一小法廷決定「集六巻一二号一四七七頁」参照)。そればかりでなく、証拠採用決定の如きものは、当該裁判所において証拠調施行前にこれを取消し得るものであり、証拠調施行後においてもその証拠の全部また一部を排除することができるのであって、従って右決定に、かりに違法違憲があったとしても、その段階においては未だ本案判決に影響を及ぼすべきものであるか否かさえ、不確定の状態にあるのであるから、刑訴法はこれに対して即時抗告の申立をすることすら、未だ実益がないものとして、これを認めなかったものと解せられる。
以上の如く本案判決に対する上訴においてその当否を争うことが出来るものであるから本件における原決定の如き「訴訟手続に関し判決前にした決定」は、刑訴四三三条一項にいわゆる「この法律により不服を申し立てることができない決定」にあたらないものと解するのが相当である。従って、所論判例違反の主張につき判断するまでもなく、本件特別抗告は不適法として棄却を免れない。
よって、刑訴四二六条一項に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

 

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