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国家賠償法1条の法的論点

①国家賠償法:憲法17条において、かつて妥当していた主権無答責の法理が否定され、違法な公務員の行為により損害が生じた場合、国、または公共団体が損害賠償責任を負うことが明示されました。これを受けて制定されたのが、国家賠償法です。
なお、国家賠償法は、郵便法その他の特別法により、修正されます。この修正も、憲法17条により法律事項とされる以上、許されることになります。しかし、国家賠償法を含めた、国賠関係法規の制定も絶対無制約ではありません。すなわち、ⅰ.目的の正当性、ⅱ手段が目的を達成する上での合理性および必要性を相的に考慮して、憲法適合性を判定されることになります。その際、勘案すべき事項としては、Ⅰ公務員の不法行為の態様、Ⅱ不法行為により侵害される利益の程度、性質、Ⅲ免責の範囲、程度などが、参考とされます(最大判平成14年9月11日-郵便法違憲判決)。

②責任の性質:国家賠償法は、公務員の活動を通じて行動する国家自身の不法行為責任を定めた規定なのか、公務員個人の責任について、国民が国家に代位できることを定めた規定なのか、争いがあります。この点について、公務員の主観が要件とされること、公務員に対する求償が認められることから、代位責任と解するのが通説的見解となっています。

③加害公務員の特定:国家賠償法上、公務員の故意・過失に基づく違法行為が要求されていることから、加害公務員が特定される必要があるのかが問題となります。前記、自己責任説によれば、公務員を特定する必要はないことになります。しかし、代位責任説をとる判例(最判昭和57年4月1日)も、具体的に違法行為を行った公務員が特定できない事案につき、①一連の行為のいずれかに違法行為がなければ損害が発生しなかったであろう場合、②一連の行為を行った公務員がすべて同一の行政主体(国ないし、公共団体)に属している場合は、当該行政主体の責任を認めることができると判示しています。

④公権力の行使:公権力の行使に関して、その範囲につき争いがあります。この点、判例通説は、純粋な私経済作用と造営物の管理作用を除くすべての作用を、「公権力」概念に含めます。最広義説は、私経済作用を含むすべての国家作用が、「公権力」概念に含まれると解しますが、私人と同等の立場で行う私経済作用までを、公権力の行使とすべきでないといえます。反面、権力作用という観念で限定を加える狭義説は、狭きに失すると言えるでしょう。

⑤職務行為:「職務に関して」の概念は、公務員の主観を問わず、外形的、客観的に公務員の行為がその職務範囲といえるか否かで判定されることになります(外形理論)。したがって、非番の警察官が制服を着て強盗殺人を犯した場合、征服を着て職務行為を装ったことから警察官の行為は外形的に「職務に関して」に該当するとして、判例は国家賠償責任を認めています(最判昭和31年11月30日)。

⑥違法性:国家賠償法上の違法をいかに捉えるかについては、争いがあります。公務員に、法ないし条理に基づく行為規範を観念し、行為規範に反した点を違法と評価する行為不法説と、国家作用の結果個人に損害が発生している状態それ自体が法に反するとする、結果不法説があります。判例(最判平成5年3月11日、最判平成11年1月21日)は、行為不法説を前提に、国家賠償法上の違法とは、公務員個人が国民に対して負っている職務上の注意義務(行為不法説に言う、行為規範)違反と捉えています。すなわち、公務員は国民個人に対して、職務上の注意義務という形で行為規範を負っており、これに反した場合、国家賠償法上の「違法」の概念に該当すると評価されることになるのです。すなわち、抗告訴訟に言う違法と、国家賠償法にいう違法が、異なる意味合いに捉えられることになります(違法性2元論)。
⑥-①裁判官:裁判官の裁判についても、公権力の行使にあたり、国家賠償法の適用が肯定されると解されています。もっとも、裁判に法令の適用違背があり、上訴、再審の対象となる場合でも、そのような法令違反がただちに違法を意味するものでなく、職務上の注意義務違反が問題になります。そして判例(最判昭和57年3月12日)は、裁判官が司法権の趣旨に明らかに背いてこれを行使したといえる特段の事情がある場合に限って、職務上の注意義務違反に基づく違法があるものと判示しています。
⑥-②検察官:検察官の捜査、訴追については、無罪判決が確定したというだけで直ちに違法との評価を下せず、ⅰ.逮捕・勾留は、相当の理由ないし必要性がないのにあえてこれをした場合、ⅱ.起訴・公訴追行は、証拠資料を勘案して、有罪の嫌疑がないのに、あえてこれをした場合など、特段の事情がある場合に限って、職務上の注意義務違反が肯定されると考えられます。
⑥-③司法警察員:司法警察員の捜査、逮捕勾留についても、犯罪の嫌疑など、処分を行う根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにも拘らず、留置などの処分を行った場合など、特段の事情が認められる場合に初めて、国賠法上違法の評価を受けると解しています。
⑥-④国会議員:国会議員の立法行為についても、立法が憲法に反することが直ちに国家賠償法上違法の評価を受けるものでなく、立法内容が憲法の一義的文言に反しているにも拘らずあえて立法を行うといった容易に想定しがたい例外的な場合でない限り、違法の評価を受けないとする判例があります(最判昭和60年11月21日)。さらに、例外的な場合の具体例として、判例(最大判平成17年9月14日)は、Ⅰ立法内容ないし、立法不作為が憲法上国民に与えられた権利を積極的に侵害することが明白な場合、Ⅱ憲法上国民に与えられた権利を国民が享受するために立法措置がⅰ.必要不可欠であり、ⅱ.それが明白であるにもかかわらず、ⅲ.国会が長期間これを怠り、消極的に権利が侵害されている場合、国会議員に個々の国民に対して負う、職務上の注意義務違反があるとして、国賠法上違法の評価が導かれるとしています。
⑥-⑤不作為:権限の行使には、権限の不行使も含まれます。したがって、国家の公権力の不行使が、国賠法上違法と評価できれば、損害賠償請求を肯定できます。そして、判例(最判平成元年11月24日・最判平成7年6月23日)は、権限の不行使が、権限を与えた法の趣旨、目的に照らし、著しく不合理である場合に、公務員の職務上の注意義務違反を認めます。すなわち、権限行使に広い裁量を認め、裁量に反する場合にのみ、職務上の注意義務違反も認められるとします。なお、不作為によりされなかった処分が、自己でなく第三者に向けられた行政処分であった場合、不作為の違法を主張して国家賠償請求を行った原告に、侵害されるべき法律上の利益があったのかが、問題とされる場合があります。すなわち、処分に関する第三者の抗告訴訟における原告適格の議論が、反射的に投影することになります。
⑥-⑥申請に対する不作為:行政庁が申請に対して応対する手続き上の義務に反して応対しなかったことだけでは足りず、ⅰ対応に十分な時間からさらに長期間が経過し、ⅱ当該自体が通常の努力により回避できたといえる場合には、不応答による精神的損害を避けるべき職務上の義務に違反したといえ、国家賠償法上、違法と評価されることになります(最判平成3年4月26日)。

⑦過失:過失概念を、行為者の主観を指し示した概念であるとの伝統的理解から離れ、社会通念上観念される注意義務に反した行為を指し示した概念と捉えるのが潮流です。このように過失概念を捉える場合、違法を職務上の注意義務違反と捉えることと同義となり、両要件が重複することになります。

 

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