遺留分減殺請求権

遺留分とは,被相続人の意思にかかわらず,相続人に残さなければならない財産を言います。

 

原則として,相続財産の処分は被相続人の意思に委ねられます。しかし,この原則の例外として被相続人の意思にかかわらず相続人へ引き継がれることになる法律が保護している相続人の取り分が,遺留分です。

 

もっとも,遺留分を実際に実現するかどうかは遺留分を認められる相続人の意思に委ねられています。具体的には,遺留分を認められる相続人が遺留分減殺請求権(遺留分を現実の権利とする請求)を行使して初めて遺留分は遺留分を認められる相続人のもとに帰属することになります。

 

このような遺留分の減殺請求は通常,通知,調停申立,訴訟などの手段によって行っていきます。

 

被相続人の子,配偶者乃至は親なのに,ご自身の引き継げる財産が全くない,もしくは著しく少ない場合は,遺留分減殺請求を行える可能性があります。詳しくは一度,弁護士にご相談ください。

遺留分権利者

兄弟姉妹以外の相続人が遺留分権利者となります(民法1028条)。

兄弟姉妹以外の相続人とは、具体的には、被相続人の子(民法887条1項)、被相続人の子の代襲相続人(民法1044条、887条2項及び3項)、被相続人の直系尊属(民法889条1項1号)、被相続人の配偶者(民法890条)を指します。

遺留分の算定

遺留分の算定において、直系尊属のみが相続人である場合、被相続人の財産の3分の1が遺留分財産となり(民法1028条1号)、その他の場合は被相続人の財産の2分の1が遺留分財産となります。

遺留分財産は、相続開始の時に被相続人が有した財産に、相続開始前の1年間にした贈与或いは1年前の日より前にした贈与でも当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条)財産の価格を加えた金額から、債務の全額を控除して算定することになります(民法1029条1項)。遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた不相当な対価による有償行為は、贈与と看做されます(民法1039条)。条件付きの権利及び存続期間の不確定な権利の価格は、家庭裁判所が鑑定人を選任したうえで、鑑定人が鑑定によって評価して決定します(民法1029条2項)。

ここで、注意が必要なのは、遺留分算定に加えられる贈与は、原則的に相続開始の時から1年間に限られますが、特別受益は相続財産に加算される点です。したがって、相続開始の1年前の日より以前の贈与であっても、特別受益に該当する贈与は遺留分財産に原則的に算入されることになります(最高裁判所判決平成10年3月24日)。

価格弁償

受贈者及び受遺者は、贈与又は遺贈の目的の価格を遺留分に応じて遺留分権利者に価格弁償して返還義務を免れることができます(民法1041条1項)。これは、遺留分権利者に損害を加えることを知っていた譲受人においても同様です(同2項)。このように、遺留分は価格弁償が可能ですので、金銭で弁償できる場合は、その価格が問題となります。

時効・除斥期間

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間の消滅時効にかかります(民法1042条前段)。また、相続開始の時点から10年間で除斥期間により消滅します(同後段)。

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