無断駐車に920万円の賠償判決

無断駐車というのはトラブルになりやすい類型です。

駐車場側も無断駐車は1時間につき◯万円請求しますなど、注意書きを出している場合が多く、注意書きの法的効力というのはよく議論される話題のひとつです。

そういった注意書きについては、法的に効力がない(契約も成立しないし、損害も注意書きを根拠として注意書きの額発生するとは認められない。)、というのが一般的な見方です。

例えば平成29年 2月15日東京地裁判決(平27(ワ)18380号損害賠償請求事件)は、下記の通り述べて特別駐車料金の請求を退けています。

 

 争点(2)(本件規約の適用の有無・主位的請求)について
(1) 原告は,原告と被告との間では,本件規約に基づく駐車場利用契約が成立していたとし,理由として,本件規約は,誰でも見られる場所に掲示されており,被告作業員らは業として一般廃棄物の収集運搬を行う者であり,一般廃棄物の収集運搬中にゴミ周辺に放置されている自転車を本件駐車場に移動し放置するの当たり,本件規約を読んで理解し,その内容に従う義務があり,それは容易かつ可能であった旨主張する。
しかしながら,前提事実によれば,本件規約の内容に照らして,そのよう内容を了知し,違法な利用について義務を負うことを了解して申込みをする者がいるとは考え難いし,本件移動行為を行ったからといって,本件規約に従うことを前提とした行為とも考え難いから,被告作業員らが本件規約に基づく駐車場利用契約の申込みを明示あるいは黙示にもしたとは認められない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。

が、そのことは、無断駐車の場合になんらの損害賠償を請求できない(あるいはされない)ことを意味するものではありません。

当然、無断駐車によって駐車場経営者に損害が生じている場合は、生じた損害については賠償請求が認容されることになります。

例えば上記判例では、売上減少に基づく逸失利益は認められないとしながら、撤去費用に基づく積極損害を下記の通り認容しています。

事実経過等,証拠(甲7,28,38,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,訴外会社作成の1台当たり3万2400円(税込み)の自転車のタイヤロック対応費用の見積書を提出し,本件移動行為分に対応したことによる支払に対し訴外会社作成の5台分16万2000円の領収書を提出している。
被告は,原告が唯一提出する領収書(甲28)については,訴外会社が原告の求めに応じて作成した領収書であり,真実は平成27年3月28日の対応費用の支払を示すものではないと主張する。しかしながら,前提事実及び事実経過等に認定のとおり,本件規約では諸費用として3万円を徴収することが定められていること,原告は通常は毎月一括して管理報酬を訴外会社に支払っていることが認められ,そのうちの個別の出動について事後的に一部分について領収書が作成されたからといって信用できないとする理由にはならないから,被告の上記主張は理由がない。
また,被告は,自転車1台当たりの対応時間は15分であったというのであるから,原告が委託会社に言われるままに1台当たり3万円を支払っていたとは考えられない,大阪市による自転車撤去費用は1台当たり2500円であるところ,当該費用が撤去運搬費用をも含んだ費用であることからすると,原告の緊急対応費用は1台当たり2500円を上回ることはないと主張する。
確かに,証拠(乙5)によれば,大阪市では放置自転車の撤去保管料として撤去保管した自転車の返還の際に2500円を徴収していることが認められるが,これが業務内容の異なる(事実経過等及び乙5によれば,訴外会社の指示で出動するとかタイヤロックをするなどの点で異なることが認められる。)民間会社における適正な管理料といえるかは疑問であるが,他方,証拠(証人D)によれば,警備員の出動の際の自転車1台当たりの対応時間が15分程度であること,本件移動に係る自転車については1度の出動で5台一括して処理しておりそのような場合に出動自体の手間は共通であるのに1台当たりの料金が同額というのも疑問であること,管理された自転車を取りに来ない者も多くタイヤロックの解除業務が行われることは少ないと考えられることが認められ,これらの事実をも合わせ考慮すると,本件各不法行為と相当因果関係のある損害としては,1台当たり3万2400円の40パーセントに相当する1万2960円とするのが相当である。
そうすると,本件各不法行為と相当因果関係がある原告の積極的損害額は51万8400円(5台×8回×1万2960円=51万8400円)となる。

 

また、当然逸失利益が認められる場合もあります。判決文までは確認できないものの、記事の判例は逸失利益を認めた可能性が相当高く、その場合1時間あたり七百円の損害が認められています。この具体的な算定というのは、同種事案に参考になると思われるため、判例の公開が期待されます。