刑法総論:論点:実行行為:不真正不作為犯

不真正不作為犯

①不真正不作為犯の実行行為:不作為の形での犯罪実行が、形式上作為の形で記載された構成要件の実行行為に該当すると評価できるだろうか。この点、刑法は、形式上作為形態で記載していても、不作為による犯罪実行も禁圧し、法益保護を図っていると解される。もっとも、不作為による消極性から、社会通念上、不作為は作為よりも行為の違法性を得がたい。したがって、不作為行為にⅰ.作為義務を肯定でき、ⅱ.作為に容易性、実行可能性が認められ、不作為を作為と同視できる場合にはじめて、実行行為該当性を肯定できるものと解する。
注1)刑法は、命令規範に禁止規範も含んでいると解され、不作為の行為が、作為の形で規定された構成要件に該当するとしても、罪刑法定主義には反しないものと解される。
注2)作為義務は、契約や条理などから導かれる。たとえば、先行行為に基づく作為義務は、条理上観念できる作為義務である。

②作為義務の錯誤:作為義務があるのに、ないと思って作為に出なかった場合、「罪を犯す意思」(38条1項)を欠くのだろうか。作為義務が、体系上どのように位置づけられるか明らかでなく、問題となる。この点、作為義務は実行行為該当性のメルクマールであり、構成要件要素と解する。したがって、作為義務を認識していないことは、故意を阻却しうる。しかし、作為義務は規範的構成要件要素であり、明確な作為義務の認識までは必要無く、作為義務を観念する基礎となった社会的事実を認識していれば、故意に欠けるところは無いと考える。
注1)作為義務を違法要素と捉え、作為義務の錯誤は、法律の錯誤として故意を阻却しないと解する見解もある。

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