海難審判の目的

海難審判法第1条は、「この法律は、職務上の故意又は過失によつて海難を発生させた海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人に対する懲戒を行うため、国土交通省に設置する海難審判所における審判の手続等を定め、もつて海難の発生の防止に寄与することを目的とする。 」と定めます。
そして、海難審判法第41条は「本案の裁決には、海難の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を明らかにし、かつ、証拠によつてこれらの事実を認めた理由を示さなければならない。ただし、海難の事実がなかつたと認めるときは、その旨を明らかにすれば足りる。」と定めます。
さらに、海難審判法第3条は「海難審判所は、海難が海技士…若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであるときは、裁決をもつてこれを懲戒しなければならない。 」と定めます。
つまり、海難審判は、①「海難の事実」と②「受審人に係る職務上の故意又は過失」を明らかにし、「職務上の故意又は過失によつて海難を発生させた」と認められる場合、裁決をもって懲戒することを目的としています。
懲戒の内容は下記のとおりです。
海難審判法第4条
1 懲戒は、次の三種とし、その適用は、行為の軽重に従つてこれを定める。
一  免許(船舶職員及び小型船舶操縦者法第二十三条第一項 の承認を含む。第四十九条及び第五十一条において同じ。)の取消し
二  業務の停止
三  戒告
2  業務の停止の期間は、一箇月以上三年以下とする。
審判において、海難の事実や、海難が故意・過失によったことなどは、証拠によって認定されなければならないことになっています(海難審判法第37条「事実の認定は、審判期日に取り調べた証拠によらなければならない。」)。
また、証拠の評価は、自由心証主義に準じて審判官の自由な判断に基づくことが明言されています。(海難審判法第38条「証拠の証明力は、審判官の自由な判断にゆだねる。 」)。
このように、海難審判は、提出された証拠により、 ①「海難の事実」と②「受審人に係る職務上の故意又は過失」を明らかにし、「職務上の故意又は過失によつて海難を発生させた」と認められる場合、裁決をもって懲戒するために開かれる審判手続きであることがわかります。
海難審判は全国の海難審判所で開かれます。