交通事故と道路交通法の道路(優先道路・交差点など)

交通事故は、道路上で発生します。この道路の意義については、道路交通法その他の関係諸法令が定めています。ここでは、道路や、優先道路、交差点などの意味を見ていきたいと思います。

道路交通法の道路とは

道路交通法2条1号

道路 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。

このように、道路交通法にいう、道路とは、「道路法…に規定する道路、道路運送法…に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所」をいいます。参考までに、道路法の道路と道路運送の自動車道に関する規定を後掲しておきます。

いずれにせよ、「一般交通の用に供するその他の場所」が含まれるので、かなり広い概念であることは間違いがありません。

この道路該当性について判例上問題となった例として、例えば、平成18年1月20日大阪地裁請求棄却判決(大阪地裁平17(ワ)3987号)があります。岸壁から自動車が海中に転落して運転者が死亡した事案について遺族が保険金の支払いを請求し、これを棄却した同判例では、波止場及び埠頭についても道路に該当すると判断しています。

 平成18年1月20日大阪地裁請求棄却判決(大阪地裁平17(ワ)3987号)より一部抜粋

道交法の適用のある「道路」に該当するかについて
原告らは、本件事故現場は、波止場及び海中であり、道交法上の運転資格は要求されないと主張するが、道交法二条一号によれば、道路とは道路法所定の道路、道路運送法所定の自動車道のほか、一般交通の用に供するその他の場所をいうとされているところ、上記(1)ア認定の事実によれば、本件事故現場は一般車両進入・通行可能な波止場及び埠頭であるから、本件事故現場は道交法の適用のある道路に該当する。

このように道路交通法にいう道路は相当幅の広い概念ということが出来ます。

参考(道路法の道路と道路交通法の自動車道)

道路法2条1項

この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。

同3条

道路の種類は、左に掲げるものとする。
一 高速自動車国道
二 一般国道
三 都道府県道
四 市町村道

次に、道路交通法2条8項は自動車道について次のとおり定めます。

道路交通法2条8項

この法律で「自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のものをいい、「一般自動車道」とは、専用自動車道以外の自動車道をいい、「専用自動車道」とは、自動車運送事業者(自動車運送事業を経営する者をいう。以下同じ。)が専らその事業用自動車(自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車をいう。以下同じ。)の交通の用に供することを目的として設けた道をいう。

道路交通法上の優先道路とは

道路交通法36条2項 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

道路交通法36条2項は、括弧書きにおいて、優先道路の定義を定めます。すなわち、優先道路とは、「道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路」を言います。

「道路標識等」は、「道路標識又は道路標示」のことです(道路交通法2条4号)。この道路標識又は道路標示の詳しい内容は、
道路標識、区画線及び道路標示に関する命令によって定められています。興味があれば、参照してみてください。

いずれにせよ、優先道路か優先道路でないかが大きく問題となるのは、交差点で生じる交通事故です。交差点というのは道路が交差する場所であり、少なくとも2つの道路が関係します。このとき、2つの道路に優先道路と劣後道路という序列が発生する場合は、過失割合に影響を与えます。

したがって、交差点の優先、劣後の別が重要になるケースも存在します。優先道路か劣後道路かの簡単な見分け方は、交差点内で中央線などが途切れずに表示されている道路があれば、表示されている道路側が優先道路となります。

しかし、上記のとおり標識で優先道路と指定される例もあることから双方の道路どちらについても中央線が伸びていないことから直ちにどちらも優先道路ではないとの帰結をとることも出来ない場合があります。

ご自身が事故に遭われた交差点で、どちらが優先道路であるかわからない場合等、専門家に助言を求めることもご検討ください。

道路交通法の交差点

道路交通法上、交差点とは、2以上の道路が交差する部分と定められています。

道路交通法2条5号 交差点 十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分をいう。

道路交通法上の道路については、こちらを参照ください。

道路の交わる部分の解釈については最高裁判所の裁判例(昭和43年12月24日最高裁判所第三小法廷決(昭和42年(あ)第2933号事件)があります。

なお、道路交通法二条五号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分―別紙図画斜線部分―をいうものと解するのが相当である。

このように、交差点については様々な解釈がありましたが最高裁判所により裁判所の採用する解釈が示されています。

この交差点については、道路交通法上節が設けられ、交通規律などについて詳細に規定しています。実際にも、交差点は道路が交差することから車両同士がもっとも接触しやすい場所のひとつであり運転上も特に気をつけなければならない地点のひとつであることは、明らかです。

道路交通法第6節 交差点における通行方法等
(左折又は右折)
第34条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
2 自動車、原動機付自転車又はトロリーバスは、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。
3 軽車両は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
4 自動車、原動機付自転車又はトロリーバスは、一方通行となつている道路において右折するときは、第二項の規定にかかわらず、あらかじめその前からできる限り道路の右側端に寄り、かつ、交差点の中心の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。
5 原動機付自転車は、第二項及び前項の規定にかかわらず、道路標識等により交通整理の行われている交差点における原動機付自転車の右折につき交差点の側端に沿つて通行すべきことが指定されている道路及び道路の左側部分(一方通行となつている道路にあつては、道路)に車両通行帯が三以上設けられているその他の道路(以下この項において「多通行帯道路」という。)において右折するとき(交通整理の行われている交差点において右折する場合に限る。)は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。ただし、多通行帯道路において、交通整理の行われている交差点における原動機付自転車の右折につきあらかじめ道路の中央又は右側端に寄るべきことが道路標識等により指定されているときは、この限りでない。
6 左折又は右折しようとする車両が、前各項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない。

(交差点における他の車両等との関係等)
第36条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。
一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車
二 路面電車である場合 交差道路を左方から進行してくる路面電車
2 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
3 車両等(優先道路を通行している車両等を除く。)は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。