伝聞法則3.伝聞例外2:検察官面前調書以外の書面

①実況見分調書

①-①実況見分調書と伝聞例外

実況見分調書も、実況見分を行った者の認識した内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠にあたる。もっとも、「検証の結果を記載した書面」(321条3項)には該当しない。しかし、検証と実況見分は捜査活動の性質を同じくし、捜査の専門家が処分を行うことに代わりも無く、情報伝達に書面が適する点も相違ない。よって、321条3項を類推適用できると考える。

①-②現場指示と現場供述

現場指示(純粋に検証(見分)の対象を指示させるもの)は、実際の指示を捜査官が知覚し、記憶し、実況見分調書の一内容として反映させるに過ぎないから、実況分調書の一部を構成する。これに対し、現場供述(現場を利用した過去の事実の供述)は、供述内容が実況見分調書とは別に要証事実として問題となる。したがって、実況見分調書とは独立した書面として、分離が要請され(刑訴法302条)、その上で、独立に伝聞例外の適用を判断すべきである。

②鑑定受託者の提出書面

「捜査…に…必要があるとき…被疑者以外の者…に鑑定…を嘱託…できる」(刑訴法223条1項)。この鑑定受託者が提出した書面も、鑑定受託者の認識した内容が要証事実となるから、伝聞証拠に当たる。もっとも、裁判所の行う鑑定(刑訴法165条)処分の経過および結果記載した書面には該当せず、321条4項の適用はできない。しかし、処分の性質に差異はなく、専門家の鑑定として客観性が認められ、書面による報告に親しむ点も同様であるから、321条4項を類推適用できるものと解する。

③写真、ビデオテープ等

③-①写真

写真は伝聞証拠として、伝聞法則(刑訴法320条1項)の適用を受けるか。伝聞証拠とは、供述の内容が問題になり、かつ、反対尋問を経ない供述証拠を指す。そして、写真自体は、対象を光学技術の応用により機械的に写し撮ったものであり、供述証拠にはあたらない。したがって、①現場写真(犯行の状況そのもの、ないしその前後の状況を撮影した写真)は、伝聞証拠の概念には該当しえない。これに対し、②再現写真(立会人の犯行状況再現を撮影した写真)は、写真に立会人の供述が投影したものであり、写真が伝える供述の内容が問題になり、かつ、反対尋問を経ていない。したがって、伝聞証拠にあたる。③説明写真(供述内容を明らかにするため供述証拠に添付される写真)については、供述証拠の一部として、供述証拠の証拠能力に従うものと解する。

③-②ビデオテープ、録音テープ

ビデオテープ、録音テープにおいても、写真と同様(=①テープそれ自体は供述証拠にあたらないが、②供述証拠が内容となっている場合は、内容自体に伝聞法則が適用され、③供述証拠に添付されている場合は、供述証拠の証拠能力に従う。)に処理する。

④書面が写しであるとき(伝聞法則とは直接関係しない)

提出された書面が原本でなく、写しであるときでも、①原本が存在し、②写しが原本を正確に再現し、③原本によらなければ立証ができない場合でなければ、証拠能力(法的関連性肯定)を認めうる。しかし、最良法則の投影である、(④)原本の提出の不可能性、困難性は、要件とならない(以上東京高判昭和58年7月13日参照)。なぜなら、その点は、写したる書面証拠提出の必要性に関して審査すればたるからである。

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